公務員の「分限免職」とは?基準・事例・懲戒免職との違いを解説!

公務員は一般の会社員とは異なり、法律によって身分が強く保障されています。
しかし、一定の条件を満たすと免職(解雇)されることもあります。
その一つが「分限免職」です。今回は、分限免職の基準や事例、懲戒免職との違いについて詳しく解説します。
1. 分限免職とは?
分限免職とは、公務員としての職務を続けることが困難と判断された場合に適用される免職処分のことです。
これは地方公務員法第28条および国家公務員法第78条に基づき行われます。
公務員の分限処分には、免職、降任、休職、停職の4種類があります。
このうち、分限免職は公務員の身分を完全に失う処分であり、事実上の解雇となります。
2. 分限免職の基準
地方公務員法第28条では、以下の理由に該当すると判断された場合、分限免職が可能とされています。
1. 心身の故障 により職務を正常に遂行できない場合
2. 勤務成績が著しく不良 な場合
3. 官職の廃止または定員の削減 により職務に従事させることができない場合
4. その他、職務遂行に適さないと認められる場合
この中でも特に注目されるのは、「勤務成績が著しく不良なとき」という項目です。業務の指示に従わない、著しく仕事が遅い、必要な知識やスキルを習得できないといったケースが該当します。
3. 分限免職の実例
佐賀県の事例(2024年)
2024年2月、佐賀県で50代の男性職員2人が「能力不足」を理由に分限免職となりました。
佐賀県で能力不足を理由に分限免職が行われたのは初めてのことです。
県によると、この職員たちは以下のような勤務態度を示していました。
• 業務の指示に従わない
• 資料を紛失する
• 数日で終わる仕事に3か月かかり、仕上がりも良くない
県は能力向上支援プログラムを実施しましたが、改善が見られなかったため、最終的に分限免職の判断が下されました。
過去の事例
2005年には兵庫県で教員が授業進行に問題があるとして分限免職となりました。
また、2016年には東京都で業務指示に従わず、能力不足と判断された職員が分限免職となるケースもありました。
4. 分限免職と懲戒免職の違い
分限免職と懲戒免職は、どちらも公務員の身分を失う処分ですが、その目的と適用される理由が異なります。
分限免職は、職務遂行が困難な職員を整理するために行われるものであり、主に能力不足や健康上の問題、定員削減などが理由となります。
一方、懲戒免職は、不正や重大な違反を犯した職員を処分するための措置であり、横領、飲酒運転、セクハラ・パワハラなどが対象となります。
手続きの面でも違いがあり、分限免職は能力向上支援などの改善機会を経たうえで判断されるのに対し、懲戒免職は規律違反の調査を経て処分が決定されます。
また、分限免職は再就職への影響が比較的少ない場合もありますが、懲戒免職は重大な処分歴として影響が大きくなります。
懲戒免職が「罰則」であるのに対し、分限免職は「能力の問題」として処理される点が大きな違いです。
5. 分限免職にならないために
分限免職は、能力不足や勤務態度の問題によって適用されることが多いため、以下の対策が重要です。
業務スキルの向上
日々の業務の振り返りを行い、上司や同僚からフィードバックを受けることが重要です。また、研修や自己学習を通じて、必要な知識やスキルを身につける努力をすることも大切です。
指示に従い、報告・連絡・相談を徹底
業務の指示を正確に理解し、分からないことは質問する習慣をつけましょう。また、業務の進捗状況を適切に報告し、問題が発生した場合は早めに相談することが求められます。
健康管理をしっかり行う
心身の健康を維持することも重要です。体調不良を放置せず、ストレスが原因で仕事に支障が出る場合は、医師や産業カウンセラーに相談することをおすすめします。
まとめ
分限免職は、公務員としての職務を遂行できないと判断された場合に適用される免職処分です。特に近年は、勤務成績の不良や能力不足が理由で分限免職となるケースが増えています。
今回のポイントをまとめると以下のようになります。
• 分限免職は、能力不足・心身の問題・定員削減が主な理由
• 最近では「業務指示に従わない」「業務効率が悪い」などで適用されるケースも増加
• 懲戒免職とは違い、「罰則」ではなく「業務遂行が困難なための措置」
• 分限免職を防ぐには、業務スキルの向上・報連相・健康管理が重要
公務員の安定した身分も、近年の改革により「能力が低いと解雇される時代」になりつつあります。自身の業務スキルを向上させ、長く安定して働けるよう意識することが大切です。