脾臓(ひぞう)は、体内の免疫機能や血液循環に重要な役割を果たす臓器です。しかし、外傷や病気によって損傷することがあります。この「脾臓損傷」は、適切な治療が必要な場合が多く、時には生命に関わることもあります。この記事では、脾臓損傷の概要、原因、症状、治療方法について詳しく解説します。
脾臓とはどんな臓器?
脾臓は、左上腹部に位置する小さな臓器で、以下のような役割を担っています:
• 免疫機能:病原体に対する免疫反応を助ける。
• 血液のろ過:古い赤血球や異常な細胞を除去。
• 血液貯蔵:緊急時に使用される赤血球や血小板を蓄える。
通常、脾臓は肋骨によって保護されていますが、外傷や病気によって損傷することがあります。
脾臓損傷とは?
脾臓損傷は、脾臓が物理的な力や病的な原因によって損傷を受ける状態です。損傷の程度は軽度の挫傷から、深刻な破裂まで様々です。重度の場合は、腹腔内で出血を引き起こし、命に関わることがあります。
脾臓損傷の原因
脾臓損傷は、以下のような原因で起こることが一般的です:
1. 外傷性原因
• 自動車事故や転倒などの強い衝撃。
• スポーツ中の衝突や打撃。
• 刺し傷や銃創などの貫通性外傷。
2. 病的原因
• 感染症:例として、伝染性単核球症(エプスタイン・バーウイルス感染症)により脾臓が腫れ、損傷しやすくなる。
• 血液疾患:脾腫(脾臓の腫れ)による破裂リスク増加。
• 腫瘍:脾臓にできた腫瘍が破裂する場合。
脾臓損傷の症状
脾臓損傷の症状は、損傷の程度や出血の量によって異なります。主な症状は以下の通りです:
• 急性の左上腹部の痛み
打撲後や事故後に左上腹部に激しい痛みを感じる。
• 肩への放散痛(ケール兆候)
左肩に痛みが広がる場合がある(横隔膜を刺激するため)。
• 低血圧やショック症状
大量出血がある場合、意識低下や血圧低下が起こる。
• 吐き気・嘔吐
内臓の損傷による腹膜刺激症状が原因。
• 顔面蒼白や冷汗
出血による貧血やショックの兆候。
診断方法
脾臓損傷が疑われる場合、以下の検査が行われます:
1. 身体診察
腹部の圧痛や膨満感、皮下出血の有無を確認。
2. 画像検査
• CTスキャン:損傷部位や出血の有無を確認する最も信頼性の高い検査。
• 超音波検査(FAST):緊急時に腹腔内出血を素早く確認する方法。
3. 血液検査
ヘモグロビン値や赤血球数を確認し、出血量を推測。
治療方法
脾臓損傷の治療は、損傷の程度や出血の量に応じて異なります。主な治療方法を以下にまとめました:
1. 保存的治療(軽度の場合)
• 病院での経過観察と安静。
• 輸血や点滴による体液補充。
• 定期的な画像検査で損傷の回復を確認。
2. 外科的治療(重度の場合)
• 脾臓摘出術:破裂や出血が止まらない場合に脾臓を全摘出。
• 部分切除:損傷が限定的で、脾臓の一部が保存可能な場合。
• 止血処置:血管塞栓術などで出血を止める。
脾臓がない場合の影響
脾臓が摘出された場合、免疫機能が低下し、感染症に対する抵抗力が弱まる可能性があります。そのため、以下のような対策が必要です:
• ワクチン接種(肺炎球菌、髄膜炎菌など)。
• 感染予防のための抗生物質の服用(場合によって)。
• 健康管理と定期検診。
脾臓損傷は、外傷や病気による損傷が原因で起こり得る、緊急性の高い状態です。損傷の程度によって治療法は異なりますが、早期の診断と適切な治療が命を守る鍵となります。万が一、事故や強い衝撃を受けた後に腹部の痛みやショック症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
脾臓は私たちの体にとって重要な役割を果たしています。日頃から健康管理を心がけ、脾臓を含めた体全体の健康を守りましょう。